【CHECK】
スキャンダルを逆手にとり人気を得る2人の歌姫と、その運命を握る敏腕弁護士の愛と欲望の交錯を華麗に描き出す話題作。オリジナルは、“ミュージカルの神様”といわれるボブ・フォッシーが1975年に生んだ舞台。現在もロングラン公演中のミュージカルを、舞台『キャバレー』などの演出で知られるロブ・マーシャルが初監督にて映画化。今作品は、2003年度第75回アカデミー賞 最優秀作品賞、最優秀助演女優賞など最多6部門を受賞している。
【STORY】

1920年代のシカゴ。スターを夢見る人妻のロキシー(レニー・ゼルウィガー)は、愛人を殺して監獄送りとなるが、そこで偶然にも憧れのスター、ヴェルマ(キャサリン・ゼタ=ジョーンズ)と出会う。ヴェルマも浮気した夫と妹を殺した容疑で投獄されていたのだ。悪徳弁護士ビリー(リチャード・ギア)の協力をとりつけたロキシーは、マスコミを巧みに利用。獄中にいながらヴェルマを凌ぐ人気を手に入れる。しかし、ヴェルマが黙ってそれを見過ごすはずはなかった。女2人+男1人の名声を賭けたなりふり構わぬバトルは、法廷をも巻き込み、ますますヒートアップしていく。
【REVIEW】
ミュージカル嫌いで有名なタモリも公言しているけど、私も含めてミュージカル嫌いの人ってなにがイヤかって、突如、幸せそうに歌い踊り出すというシチュエーションが、お約束だと分かっていながらも許せないのだ。しかしその点、この『シカゴ』は無理がない。ドラマ・パートとダンス&ソング・パートを、現実&幻想といった具合に分けているので、違和感がないのだ。セリフの途中に急に歌が入るような演出ではなくて、イマジネーションの中だけをミュージカル仕立てにして、しかも全てステージショーの形式に統一している演出はお見事の一言。

とにもかくにも、「5・6・7・8!」というカウントから威勢のいいイントロが始まり、楽屋口からナイトクラブに飛び込んでくる女、やがて始まるステージ、そこへスポットライトを浴びたキャサリン・ゼタ=ジョーンズがパワフルに「オール・ザット・ジャズ」を歌い始めるという、この導入部が猛烈にカッコイイ! ヴィブラートのよくかかった伸びやかな彼女の歌いっぷりに、鳥肌が立つこと間違いなし。これ1曲で一気に映画に引き込まれること請け合い。
ミュージカル映画というと吹き替えが常識化してたけど、近年『ムーラン・ルージュ』でニコール・キッドマンやユアン・マクレガーがそうだったように、この映画でも出演者たちがそれぞれ自分で歌って踊っている。

キャサリンは映画デビューする以前、ロンドンのウェストエンドで舞台に立っていたということもあって、その貫禄を遺憾なく発揮している。ピンとまっすぐ伸びた脚を高々とあげたり、美しく背中を反り返したり、野望に満ちた瞳をギラギラ輝かせ、勝ち気で自信家で計算高いヴェルマ役を、思いっきり楽しんで演じていることが伝わってくる。アカデミー賞 最優秀助演女優賞受賞も大納得のハマリぶりである。

リチャード・ギアも同じくロンドンのウェストエンドで「グリース」他、数々のブロードウェイの舞台を経験済み。歌はもちろんのこと(ちょっと声のトーンに好き嫌いがあるかもしれないけど…)、今回は華麗なタップダンスまで披露してくれる(足のアップばかりだけど、本人とのこと。「あれは本人ですか?」という質問ばかりされるので、かなりご立腹らしい 笑)。
この2人に比べると、舞台未経験のレニー・ゼルウィガーは少し印象が弱いようにも見えるけれど、それでも蜂蜜に砂糖をぶっかけたような甘ったるいファニーな歌声は、キャサリンのそれとは好対照だし、出番の多さと演技力で充分にカバーしている(あと脚線美ね 笑)。

他にも意外だったのは、『ギャング・オブ・ニューヨーク』にも出てたジョン・C・ライリーの歌。したたかな妻ロキシーを一途に愛する哀愁漂う夫を演じており、その歌声はオペラ歌手なみ。1曲だけなのが惜しいくらい。
確かに、話題性が道徳心に勝っていた1920年代のシカゴという街での、利己的でダークな内容に眉をひそめる向きもあるでしょう。しかし、個人的にはこの毒気も好き。自分の欲望にとことん正直で忠実な人の姿って、人間の根源的な生存本能に訴えるものがあるからこそ魅力的なのではなかろうか(←ちょっと極論)。半端でみみっちい欲望はみっともないけれど、この物語の主要3キャラの欲望ぶりはスコーンと突き抜けて爽快ですらある。そもそもこの映画は、そんなストーリーより、出演者たちの芸を楽しむ映画なのだから。これぞ「That's
Entertainment!」である。

鑑賞後は当然サントラのCDは買いである(笑)。サントラを聴いてると、そのシーンが甦ってきて、また観たくなってくる。こりゃ『ブラックホーク・ダウン』以来の久しぶりの「2回鑑賞」になりそう♪ 「観ようかなぁと思ってるけど、アカデミー賞作品ってどうも苦手」と迷ってるそこのあなた! 観て損はありませんぜ(笑)